償還請求権(リコース)とは、売掛債権が回収できなかった場合に、債権を譲渡した元の債権者に対して、その未回収分を返済するよう請求できる権利を指します。この権利の有無は、ファクタリング契約において非常に重要なポイントであり、利用者のリスクや契約条件に大きな影響を与えます。
ファクタリング契約には、主に以下の2種類があります:
- 償還請求権なし(ノンリコース)
- 償還請求権あり(リコース)
以下では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
償還請求権なし(ノンリコース)
特徴
- 売掛債権をファクタリング会社に譲渡した時点で、未回収リスクもファクタリング会社に移転します。
- 売掛先が倒産したり、支払いが滞ったりしても、利用者(債権を譲渡した企業)は返済義務を負いません。
メリット
未回収リスクの回避
売掛先の経営状態や倒産リスクを気にする必要がなく、安心して資金調達が可能です。連鎖倒産リスクの軽減
売掛先が倒産しても、利用者がその影響を受けることはありません。これにより、連鎖倒産のリスクを大幅に軽減できます。新規取引先の活用
新規の売掛先に対しても、未回収リスクを気にせず積極的に取引を行うことができます。
デメリット
手数料が高い
ファクタリング会社が未回収リスクを負うため、手数料が高めに設定される傾向があります。特に中小企業や信用力の低い売掛先の場合、手数料がさらに高くなることがあります。審査が厳しい
ファクタリング会社はリスクを軽減するため、売掛先の信用力や取引履歴を厳しく審査します。そのため、審査に時間がかかったり、通過が難しい場合があります。
償還請求権あり(リコース)
特徴
- 売掛債権を譲渡した後も、売掛先からの回収ができなかった場合には、利用者がその未回収分をファクタリング会社に返済する義務を負います。
- 実質的には、売掛債権を担保にした融資に近い形態とみなされることがあります。
メリット
手数料が低い
ファクタリング会社が未回収リスクを負わないため、手数料が比較的低く設定される傾向があります。審査が通りやすい
ファクタリング会社にとってリスクが少ないため、審査が比較的緩やかで、資金調達がスムーズに進む場合があります。
デメリット
未回収リスクを負う
売掛先が倒産した場合や支払いが滞った場合、利用者がその損失を補填する必要があります。これにより、資金繰りが悪化する可能性があります。実質的な融資とみなされるリスク
過去の判例では、償還請求権ありのファクタリング契約が「融資」と判断されたケースもあります。この場合、貸金業法の規制を受ける可能性があり、違法性が問われる場合もあります。
償還請求権の有無による比較
| 項目 | 償還請求権なし(ノンリコース) | 償還請求権あり(リコース) |
|---|---|---|
| 未回収リスク | ファクタリング会社が負担 | 利用者が負担 |
| 手数料 | 高い | 低い |
| 審査の厳しさ | 厳しい | 緩やか |
| 資金調達のスピード | やや遅い | 速い |
| リスク軽減 | 高い | 低い |
注意点と選び方
契約内容を確認する
契約書に「償還請求権特約」や「買い戻し特約」といった文言が含まれている場合は、償還請求権ありの契約である可能性が高いため、注意が必要です。信頼できるファクタリング会社を選ぶ
償還請求権ありの契約を提示する業者の中には、違法業者が含まれている場合があります。貸金業登録をしていない業者が融資に近い契約を行うことは違法です。契約前に業者の信頼性を十分に確認しましょう。リスクとコストのバランスを考慮する
売掛先の信用力や自社の資金繰り状況に応じて、償還請求権の有無を選択することが重要です。リスクを回避したい場合はノンリコースを、コストを抑えたい場合はリコースを検討しましょう。
まとめ
償還請求権の有無は、ファクタリング契約におけるリスクとコストを大きく左右します。
- リスクを回避したい場合: 償還請求権なし(ノンリコース)を選択。
- コストを抑えたい場合: 償還請求権あり(リコース)を選択。
契約内容を十分に確認し、信頼できるファクタリング会社を選ぶことで、安心して資金調達を行うことができます。


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